人間の耳が聞く「音」は、空気振動という物理現象で、その物理現象に「デジタル」な波形が存在すればそれは「歪み」のような物な訳で。
デジタル卓が猛威を奮い始める20世紀の終わり、十分な処理能力を持たないチップを積んだ48Kサンプリングレートのそれは21世紀に入って「iPad」と言うアイテムを手に入れて爆発的に普及していく。
確かにCDよりも解像度の高いレートで処理される音が「悪い音」だと言うわけではない。
でも、なにか足りない感は拭い去れないなかで、僕は当時せめてもとiPadコントロールをあきらめて、96Kで回るレコーディング卓を自分のスタジオから持ち出してSRをやっていた。
でも、いつの間にかアナログ卓の頃の「自分的サウンド」を失っていっているのをどこかに感じて仕事をしていた。
もちろん、何千万円の卓を所有できるわけではないく、そういう卓がある環境でする仕事も全体からの割合で言うと少ない中、自分自身が自分的サウンドを忘れかけていたかも知れない。
今回、ちょっと嬉しい巡り合いがあった。色々な都合で初めて使うことになったALLEN&HEATH SQ5。
初めて使うと言う事もあって、正直使いにくさを感じたのは事実なのだが、96Kで回るそれは音の抜けてくる感がちょっとおいしい。
そんな事を感じながら、自分が気持ちいいと思う音を作っていく。
理屈やパラメーター数値ではなく感覚だけで「そこ」に近づいていく中で、気が付くとアナログの頃に近い音を出している自分に気が付く。
「ああ、気持ち良いやん~」などと思いながら。
最新のチップを積んだ48Kの卓でも感じなかった気持ちよさがこの卓にはある。
アナログには程遠いものの、その頃の自分の音を思い出した感覚がそこにはあった。
後分析のみで比較テストしたわけではないのだが、サンプリングレート的な理由で高域のクリアさが上がることで低域の自由度も格段に増す。過渡期の20年前に比べると格段に性能の上がった96Kの情報量を処理するチップがあれば、かなり美味しいところまで行けるのだろうと。
録音作業における96K~192Kの聞き方とはある意味において全く別物の身体で聞くPA仕事は「あの頃に戻したい」と、この仕事以降時間があると「PAをアナログ環境に戻したいモード」で機材情報を集めてるデカシミ。
(アナログに戻りたいって話かい!